秘匿されし聖女が、邪に牙を剥ける時〜神殿を追放された聖女は、乙女ゲームの横行を許さない

……そう、これは精霊王様の思し召し。

この【秘匿されし聖女】の力で、国に蔓延る邪気を退けろと、神託を受けて使命を全うしたに過ぎないのだ。



「使命だからといって、ラヴィが大の男に叩かれたり蹴られただなんて、許せるはずがないよ。俺がもう少し早く踏み込むことが出来たのなら、防げたことなのに……」

「そうですか?確かに痛かったですが……でも、私としてはそれで大聖女様を護れて、アルフォード様がこうしてご無事でしたので、それでいいと思ってますよ?」

「……」

「……ん?アルフォード様?」

気がつくと、アルフォード様が目を見開かせ、無言で固まっていた。

あれ。私、変なことを言っただろうか。

そう考えるとまたもや焦ってしまい、今度はこちらが謝罪をしようかと思っていると。

「ラヴィ、君という人は……!」

「あ、あああ!すみません!」

「どうして人のことばかり……」

「……へ?え?」

驚くことに、咄嗟に膝の上の手を取られる。

ギュッと握られ、熱が伝わっては胸も熱くなるのだが。

怒られるのかと思いきや、見せられたのはどこか必死そうで何かを堪えている表情だった。
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