秘匿されし聖女が、邪に牙を剥ける時〜神殿を追放された聖女は、乙女ゲームの横行を許さない
……そんなお顔も素敵です。
だなんて冗談を言ってる場合ではなかった。
壊れ物かのように両手でそっと握られた手は、いつの間にかそっち側に引き寄せられていて。
私の手を取っているアルフォード様は、いつの間にか寝台の傍で膝をついている体勢となっている。
あっ!膝……膝!
公子様とあろう者が、一介の令嬢の前で膝を付いては……!椅子に、椅子に座って下さい!
いつの間にかの状況に、更に焦ってしまう。
だって、淑女の手を取って跪くこの体勢はまるで……!
お膝も汚れてしまうし。
「アルフォード様!膝……」
「……ラヴィ、俺は絶対にこの醜聞を挽回してみせる」
「膝っ……は、はい」
「王都に継ぐ第二の都市、ルビネスタ公爵領の家督を継ぐ者として、領地繁栄のために前を向いて日々励みたいと思う。……そして」
繋ぐ手に、キュッと力が入った。
「そして、いつか強く立派な君に見合うような男になってみせる。だからーー」
強く立派な君、とは……誰か、と聞くまでもなく。ここにいるのは私だけなのだから、私なのだろう……?え?