イジワル御曹司と契約妻のかりそめ新婚生活

彼が、訝しげに眉を寄せる。
こういうことをちゃんと口にするのは照れくさい。いつもの私なら、きっと上手く言えずにいつまでもぐずぐずしていただろうけど、今日はお酒にも助けられている。


「なんだ?」
「あの、河内さんが、色々教えてくれて、それで」
「色々?」


例え助けられても、言葉選びが下手くそなのには変わらない。
単純にありがとうだけで、すめばいいのに、そうもいかない。


「郁人が、私のことをちゃんと見て理解してるんだなあって、河内さんが」


それがとても、嬉しかった。
私が言葉足らずなこと、それだけじゃなく頭の中ではいつもごちゃごちゃと考えていて、私なりに感情もあるのだということをわかってくれていることが。


「……別に、たいしたことは言ってない」


素っ気なく返されたけれど、顔を見れば少し照れているのがわかる。
私も、郁人が理解してくれるように、彼を理解していけるようになりたい。
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