イジワル御曹司と契約妻のかりそめ新婚生活
「当たり前のことを言った。それと、歩実はもう少し上手く立ち回らないと、損をするだけだ。俺が言えた義理でもないが……」
照れ隠しと心配が入り雑じるお説教のような言葉が続くのを、うん、と素直に頷いた。
「ありがとう。郁人がわかってくれて嬉しかった」
自然に頬が綻ぶ。
郁人と私の間に両手をおいて、前屈みになって彼の顔を覗き込む。彼はちょっと、目を見開いて私を凝視している。
アルコールでまだ少し、頭がふわふわとしているせいか、とても間近で見つめあっているのだということに、あんまり気づいていなかった。
「すごく、嬉しかった」
返事がないからもう一度、そう言うと。
ふわりと、私の手の上に大きな手が重ねられた。