イジワル御曹司と契約妻のかりそめ新婚生活
無表情しか見たことがなかったのが、ちょっとずつ笑顔がわかるようになってきた。
結婚前は私に対して無表情なだけで、他の人にはもう少しくらい笑っているのかと思っていたのに、違ったらしい。


「人のフォローしたりするタイプでもなかったのに、奥さんのためならできちゃうんですもんね」


それは先日の、河内さんを窘めてくれた時のことだろう。
たしかにその一件は私も驚かされた。


「何嬉しそうな顔してるんですかきもちわるぅ」
「別にそんな顔はしてません」


反論して、オムライスを乗せたスプーンを口に運び、ぱくりと咥える。
咀嚼しながら本当は、口元が緩んでいることには気が付いていた。

< 118 / 269 >

この作品をシェア

pagetop