イジワル御曹司と契約妻のかりそめ新婚生活
男の人に、こんな風に見つめられてこんな言葉を言われたのは、もちろん初めての経験だった。しかし、頬が赤くなりかけた時、それを打ち砕くような冷静沈着な声音が響く。
『君の結婚の条件を聞きたい』
『は?』
『すり合わせは必要だろう?』
がくっ、とこけそうになった。いや、座ってるから私の心境を表すためのただの比喩表現だけど。
……ですよね。だけどそれなら、”君だから”なんて思わせぶりなセリフ言わないで欲しい。
あくまで条件優先でありそこに甘やかな感情は見つけられそうにない。真に受けそうになってしまった自分を、こほんと咳払いで誤魔化し、気を取り直す。
しかし条件、と言われてもまさか本気で検討するつもりでは来ていなかったから、具体的には浮かばない。
……私、絶対結婚に向いてないと思うんだけどなあ。
まず他人と関わることが苦手だし、ひとりでいることが好きだ。他人と一緒に暮らすなんて、私にできるか自信がない。
全く憧れがないわけではないけれど。世間一般の女性のように、いつか愛する人と結婚して……という、恋愛小説に憧れるような感覚でしかないのだ。
ただ、私には少々問題がある。だから、どこか遠い出来事のように感じてしまうのだと思う。
……あ、それを正直に言えばいいんだ。そしたら佐々木さんも考え直すに決まってる。
ふと、そう思い立った。
『では、遠慮なく……』
『ああ』
『寝室は別で。夫婦として触れ合うことは私には出来ませんが、それでもいいですか?』