イジワル御曹司と契約妻のかりそめ新婚生活
今夜はいつもより、遅い。
本を広げているけれど、さっきから少しも内容が頭に入らなかった。何度も時計を見ては、スマホの着信を見て、本を読む。

読むと言っても、すぐに頭が別のことを考え始めるから、ただ文字を目で追っているだけだ。

告白すると決めたけれど、なんて言えばいいのだろう。
何から切り出せばいいのだろう。どのタイミングで?

深く考えれば考えるほど、何も思いつかない。

そうして、もうじき深夜零時を回ろうかという頃だった。
玄関ドアが開いた音がリビングまで聞こえて、どくんと心臓が跳ねる。頭は一気に焦り始める。だけど何も考え付かないままなのが、いっそ諦めがついたのか。

――私が話下手なのは郁人も重々わかっているだろうし。きっと、唐突になってしまってもしどろもどろになってしまっても、ちゃんと聞いてくれる。

受け入れてくれるかどうかはともかくとして、私は郁人をある意味、信頼していた。彼は、真剣に話そうとしていることをはぐらかしたり無視したりはしない人だ。
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