イジワル御曹司と契約妻のかりそめ新婚生活
彼がリビングに入ってきて、驚いたように目を見開いた。
「まだ起きてたのか」
「おかえりなさい」
ソファに座ったまま、本を閉じる。
彼はジャケットの上着を脱いで、ダイニングの椅子の背もたれにばさりとかけた。いつもよりやや乱暴な仕草が気になって、とりあえず間を繋ぐ言葉を探す。
「コーヒー淹れようか?」
「いい。いつも自分でしてるだろう」
「あ、うん」
あからさまに、機嫌が悪い?
こんなことは初めてで、戸惑った。
機嫌の悪い相手に、どう言葉をかけたらいいのかとんと見当がつかず、彼が動くのを目で追う。
テレビの音がどうにか沈黙を和らげてくれているが、かといって気まずい空気がどうにかなるものでもない。