イジワル御曹司と契約妻のかりそめ新婚生活


「大丈夫なら、いいけど。ご飯はちゃんと食べてる?」
「ああ。悪いな、仕事が立て込んでて、気を使わせた」


ふるりと頭を振る。
ほっとして、心が温かくなった。


「郁人も、いつも私の心配してくれてるでしょう。おあいこだよ」


余計なことだと言われなくて良かった。
『干渉』と言えば言葉は悪い。だけど『心配』や『気遣い』と言い換えるだけで全然違う。
そういうことが、下手なりに出来る関係が自分に築けたことが嬉しい。それが、郁人で嬉しい。

そんな感情が、私の背中を押した。
疲れてる郁人に今は無理に、告白はしなくても、言える言葉はある。


「……結婚したのが、郁人で良かった」


郁人でなければこんな風には思えなかった。
緊張はしたけれど、素直な気持ちがするりと言葉になって出ていた。



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