イジワル御曹司と契約妻のかりそめ新婚生活
突然、腕を掴まれて引き留められる。
今度は私の方が驚いて、手から本が滑り落ちた。
ばさっと音を立ててふたりの足元に落ちた本を、慌てて拾おうと腰を屈める。すると同じように郁人も屈んでいて、前髪が触れあったくらいのところでお互いぴたりと止まった。
私の息も止まった。
既視感のある状況だ、と頭の隅っこで思う。
恋愛小説でよくありがちなシーンだからだろうか。
けれどたとえ王道と言われようと、実際に体験したらやっぱり何事もなかったようには、できなくて。不自然に、頑なに足元の本に目を向けたままになってしまった。
一度キスを避けてから、距離が出来てしまっていたから余計になのかもしれない。
……本、取らないと。
そう思っている間に、先に郁人の手がゆっくりと動き出し、本を拾い上げた。
今度は私の方が驚いて、手から本が滑り落ちた。
ばさっと音を立ててふたりの足元に落ちた本を、慌てて拾おうと腰を屈める。すると同じように郁人も屈んでいて、前髪が触れあったくらいのところでお互いぴたりと止まった。
私の息も止まった。
既視感のある状況だ、と頭の隅っこで思う。
恋愛小説でよくありがちなシーンだからだろうか。
けれどたとえ王道と言われようと、実際に体験したらやっぱり何事もなかったようには、できなくて。不自然に、頑なに足元の本に目を向けたままになってしまった。
一度キスを避けてから、距離が出来てしまっていたから余計になのかもしれない。
……本、取らないと。
そう思っている間に、先に郁人の手がゆっくりと動き出し、本を拾い上げた。