イジワル御曹司と契約妻のかりそめ新婚生活
「あ……ありがと」
差し出された本を受け取る。けれど、郁人との距離が近すぎて、再び立ち上がろうとするなら彼を押し退けなければいけない。
取られたままの腕を振り払って。
それを躊躇っていると、突然強い力で抱き寄せられた。
「ひゃっ!?」
固い体の感触がスーツ越しに伝わる。驚いて変な悲鳴が出てしまった。
キスは何度もした。その延長上で、軽く抱き寄せられるような姿勢になったこともある。
だけど、こんな荒っぽいことは初めてで、否応なしに私の体は固くなる。
背中を周り肩を掴む郁人の手が、とても強い。ふたりの体の間で、私の手が所在がなく文庫本を強く握った。
「ちょっ、郁人、あの」
やめて、と言葉が続くより早く、私の肩口に顔を埋めた彼の声が聞こえた。
「……俺も」
ほう、と長く息を吐き出しながらの短い呟きだ。私の首筋に顔を擦り寄せながら言葉が続いた。
「歩実と結婚して後悔してない」
差し出された本を受け取る。けれど、郁人との距離が近すぎて、再び立ち上がろうとするなら彼を押し退けなければいけない。
取られたままの腕を振り払って。
それを躊躇っていると、突然強い力で抱き寄せられた。
「ひゃっ!?」
固い体の感触がスーツ越しに伝わる。驚いて変な悲鳴が出てしまった。
キスは何度もした。その延長上で、軽く抱き寄せられるような姿勢になったこともある。
だけど、こんな荒っぽいことは初めてで、否応なしに私の体は固くなる。
背中を周り肩を掴む郁人の手が、とても強い。ふたりの体の間で、私の手が所在がなく文庫本を強く握った。
「ちょっ、郁人、あの」
やめて、と言葉が続くより早く、私の肩口に顔を埋めた彼の声が聞こえた。
「……俺も」
ほう、と長く息を吐き出しながらの短い呟きだ。私の首筋に顔を擦り寄せながら言葉が続いた。
「歩実と結婚して後悔してない」