イジワル御曹司と契約妻のかりそめ新婚生活
『互いに干渉しない』という前提を破り彼の事情に踏み込むには、この契約書を持ち出して話をするのが一番だ。更に、契約違反を持ち出して『契約内容の変更』という名目にすれば、仕事をしている時の自分のペースで切り出しやすいかと思った……のだが。

数秒の沈黙が降りる。郁人の方は、ぽかんと口を開けて私を見ている。

……この切り出し方は、失敗だっただろうか。

この後の展開をどうしようかと考え始めた時、郁人が動く。

「契約内容の再考、ということだが」

声音でわかる。
郁人も業務モードに入ったようだ。

「はい」と神妙に頷くと、郁人がソファに腰かけて結婚契約書に視線を落とす。
ぽん、と片手が隣の座面を叩いたので、私もそこに座った。

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