イジワル御曹司と契約妻のかりそめ新婚生活
「まず、心構えというか覚悟を決めたいのだけれど……一応、確認していい?」
郁人が優しく宥めてくれる指もむなしく冷や汗をかきながら、言った。
「そういう、後継者とかが必要な、普通の一般家庭じゃないご家族だってことでいい?」
「……まあ、そうだ。会社を経営してる」
しかもそれって結構デカい会社だよねきっと。
政略結婚とかの話が出てくるんだから。
そこから聞く彼の事情は、私にはなんだかとても、遠い世界のことのようだった。
学生の頃、両親を亡くした彼は、母方の親戚の援助で高校、大学と卒業した。
しかしながら、それはいずれ本家の後を継ぐ従弟をサポートする人材としての教育であり自由はなかったという。
今居る会社も一時的な居場所であって、従弟がその会社で重要なポストに就く頃には郁人も戻らなければいけない、それは最初から決まっていた。
その件は、受け入れていたらしいのだ。
大学を卒業するまで援助してもらったのは確かだし、恩は返すべきだと覚悟はしていた。
ただ、結婚までは、誰にも口出しをされる謂れはない。