イジワル御曹司と契約妻のかりそめ新婚生活
***

オフィスに着くと、私は数人の社員にいきなり取り囲まれた。
原因はわかっている。

訃報の更に翌日、眞島商事の会長、社長を含め幾つかの役員の入れ替わりがあり、その中に郁人の名前があった。眞島商事本社、取締役常務として。そして、次期後継者として。

「佐々木さんが眞島の跡継ぎって、知ってたんですか?」
「もうこちらには来られないんですか? 昨日から佐々木さん休んでるから、どうしたのかと思ってたら……」

知っていたけど、かなり最近の話だ。
郁人が昨日から出勤していないのは、上層部には事情が行き渡っているらしく、私が言うまでもなく休暇扱いになっていた。

矢継ぎ早にされる質問に、どう答えるべきか困っていると、いきなり腕を引っ張られて人の輪から抜け出した。

「河内さん?」
「すみません、ちょっと話があるんで!」

オフィスを抜け出し、人のいないところを探して、非常階段に辿り着く。

「どうなっているんですか一体!」

私よりも少し小柄な彼女に、壁ドンをされて迫られてしまった。
郁人にもまだされたことがないのに。
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