イジワル御曹司と契約妻のかりそめ新婚生活
「佐々木さん、どうなるんです? このまま眞島商事に行ったきり? 歩実さんは仕事来てて大丈夫なんですか?」
眉を寄せて、初めてみるくらい必死な表情の彼女からは、本気で心配してくれているのが伝わってきた。
「まだ、よくわからないの」
「わからないって……」
「郁人は多分、戻ってこないかもしれない」
正式に後継者として公表されてしまったのだ。
多分これはもう、覆らないのだろう。
「どうして、佐々木さんが後継者に?」
「名字が違うけど、親族らしくて」
「らしくて、ってそんな他人事みたいに」
「ん、またちゃんと説明できるようになったら言うよ」
「本当ですね?」
「うん。河内さんには色々心配してもらってるの、わかってるから」
そう言って微笑むと、彼女もちょっと納得してくれたようで、壁ドンは解かれた。
説明、できるようになればいいけれど。
その言葉はどうにか飲み込んで、オフィスに戻ろうと彼女を促す。
他人事みたいに、ではなく、私は今のところ、他人なのだ。郁人の親戚から見れば。身内には入れてもらえない。
私を家族だと認めてくれるのは、佐々木郁人、その人だけだ。
だけどその本人が、どんどん遠くなっていってしまうような恐怖に、この二日間襲われていた。
早く、郁人の顔が見たい。
郁人に会って、郁人の口から直接説明されることだけを、信じよう。受け入れようと決めていた。
彼が後継者と定められても、そうでなくても、郁人の妻でいられるならそれでいい。
離さないと言ってくれた郁人を信じる。