イジワル御曹司と契約妻のかりそめ新婚生活
黙ったまま封筒に手を伸ばす。
中身を確認する指が震える。離婚届なのはわかっている。そこに、見知った筆跡があるのを恐れた。
出てきた離婚届は、未記入だった。
……大丈夫。まだ、大丈夫。
自分にそう言い聞かせて、深呼吸する。離婚届を再び綺麗に折りたたみ、封筒の中に戻した。
「あなたに、私たちのことを決められる謂れはありません。そういうことは夫婦で話し合うものだから」
背筋を伸ばして毅然と言い返したつもりだ。けれど、声はどうしても震えてしまった。
「その郁人さんが、今は動けないから私が来たの。さっきそう言わなかった?」
「離婚届に彼は記入してないですよね? あなたの言葉を信じろと言われても無理です」
「だから、彼は忙しいの。今、私が代わりに役所に行ってもらってきたばかりのものだから仕方がないでしょう?」
私が何を言うかわかりきっていて、返答が用意されていたかのように淀みなく早い。
ぎゅっと膝の上で両手を握り合わせた。
信じる、信じる。
大丈夫。
そう自分に唱えながら、言い返す言葉を探す。
けれどそれより先に、彼女の言葉が耳を打つ。とても、哀しそうな顔で。
「可哀想に。とても、必死に見えるわ、あなた」
その言葉が、私の頭を真っ白にしてしまう。
「好きでも、どうしても叶わないことはあるのよ。無理を押せば傷つくだけだわ」
可哀想だと言いながら、その言葉と視線こそが、私の心に傷をつけていった。
中身を確認する指が震える。離婚届なのはわかっている。そこに、見知った筆跡があるのを恐れた。
出てきた離婚届は、未記入だった。
……大丈夫。まだ、大丈夫。
自分にそう言い聞かせて、深呼吸する。離婚届を再び綺麗に折りたたみ、封筒の中に戻した。
「あなたに、私たちのことを決められる謂れはありません。そういうことは夫婦で話し合うものだから」
背筋を伸ばして毅然と言い返したつもりだ。けれど、声はどうしても震えてしまった。
「その郁人さんが、今は動けないから私が来たの。さっきそう言わなかった?」
「離婚届に彼は記入してないですよね? あなたの言葉を信じろと言われても無理です」
「だから、彼は忙しいの。今、私が代わりに役所に行ってもらってきたばかりのものだから仕方がないでしょう?」
私が何を言うかわかりきっていて、返答が用意されていたかのように淀みなく早い。
ぎゅっと膝の上で両手を握り合わせた。
信じる、信じる。
大丈夫。
そう自分に唱えながら、言い返す言葉を探す。
けれどそれより先に、彼女の言葉が耳を打つ。とても、哀しそうな顔で。
「可哀想に。とても、必死に見えるわ、あなた」
その言葉が、私の頭を真っ白にしてしまう。
「好きでも、どうしても叶わないことはあるのよ。無理を押せば傷つくだけだわ」
可哀想だと言いながら、その言葉と視線こそが、私の心に傷をつけていった。