イジワル御曹司と契約妻のかりそめ新婚生活

「書いた方がいいわ。郁人さんは、なんだかんだ優しい人だけれど、叔父様叔母様は怖い人よ。受け継いできた会社を、後継に託すためには何でもするわ」
「……嫌です」

哀れみ混じりの視線に耐えながら、それでも顔を横に振った。
離婚届の入った封筒も、受け取らないままソファから立ち上がる。

「絶対、書きません」
「わからない人ね。叔父様達なら、あなたをこの会社から追い出すことだってできるのよ。郁人さんが戻らない上に会社をクビになったらあなたどうするの?」
「構いません、それでも」

郁人はちゃんと帰ると言った。だからそんなことには、ならない。

「……あなたの実家のレストランがある地域、次のリゾート施設の候補にすることもできるのよ」

哀れみの目から、今度はまっすぐ射るような目を向けられる。びくっと私の肩が跳ねて、ついに言い返すことが出来なくなった。

「私の家は、常盤不動産だもの」


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