イジワル御曹司と契約妻のかりそめ新婚生活
***
何も言えなくなった私の前に、彼女はもう一度テーブルを滑らせるようにして離婚届の封筒を押し出した。
言葉は出なくても、それだけは手にしないまま私は彼女を残して応接室を出た。
どうしていいかわからず呆然としながら社内を歩く私を捕まえたのは、ふたりの上司だった。私たちのお見合いをセッティングしたふたりの上司は、私を課長室に避難させた。亀爺の手が、優しく背中を撫でて、私は一粒だけ涙をこぼした。
「大丈夫かい」
そう問われて頷き、いや全然大丈夫じゃないなと直後に首を傾げた。
この上司ふたりも、まさかこんな事態になるとは思わなかっただろう。
「郁人さんととにかく話をします」
そう言ってふたりを束の間かもしれないが安心させて、早退するかと聞かれたが大丈夫だと答えた。
私を辞めさせることもできる、と言われたのだ。少しの隙も作りたくなかった。
『身の程を知りなさい』
私を脅す言葉を吐いた時、彼女の目がそう言っていた。
郁人はとうとう、私だけが必死に手を伸ばしても、届かないところへ行ってしまうのだろうか。
こんなことなら、すきになんてならなければよかった。
勇気なんて、出さなければよかった。
悔いるような気持ちはあるのに、私の感情は嘘はつけない。
たくさんの人に邪魔されて、ダメだと言われても、叶わなくても。もうすきになってしまったのだ。その気持ちは消えない。
何も言えなくなった私の前に、彼女はもう一度テーブルを滑らせるようにして離婚届の封筒を押し出した。
言葉は出なくても、それだけは手にしないまま私は彼女を残して応接室を出た。
どうしていいかわからず呆然としながら社内を歩く私を捕まえたのは、ふたりの上司だった。私たちのお見合いをセッティングしたふたりの上司は、私を課長室に避難させた。亀爺の手が、優しく背中を撫でて、私は一粒だけ涙をこぼした。
「大丈夫かい」
そう問われて頷き、いや全然大丈夫じゃないなと直後に首を傾げた。
この上司ふたりも、まさかこんな事態になるとは思わなかっただろう。
「郁人さんととにかく話をします」
そう言ってふたりを束の間かもしれないが安心させて、早退するかと聞かれたが大丈夫だと答えた。
私を辞めさせることもできる、と言われたのだ。少しの隙も作りたくなかった。
『身の程を知りなさい』
私を脅す言葉を吐いた時、彼女の目がそう言っていた。
郁人はとうとう、私だけが必死に手を伸ばしても、届かないところへ行ってしまうのだろうか。
こんなことなら、すきになんてならなければよかった。
勇気なんて、出さなければよかった。
悔いるような気持ちはあるのに、私の感情は嘘はつけない。
たくさんの人に邪魔されて、ダメだと言われても、叶わなくても。もうすきになってしまったのだ。その気持ちは消えない。