イジワル御曹司と契約妻のかりそめ新婚生活

 ただ、存在がひとり増えただけで今までと変わらないのだ。
 それと、案外、バラエティでたまに笑ってたりする。


「……ふっ」


 ちょうど、芸人がテレビでボケたところだった。ソファのひじ掛けに身体を預けて頬杖を突き、小さく噴き出したのが聞こえた。


「この芸人さん、好きなの?」
「ん?」
「こないだも笑ってた」


 本から視線をテレビに向けてそう尋ねた。意外だ。正直、喋りもそんなに上手じゃない芸人さんで、ちょっとバカっぽいのだけど。


「このバカっぽいとこが好き」


 僅かな会話を重ねてちょっとずつわかってくる。佐々木郁人は、バカっぽい芸人が好きな、案外普通の人だった。


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