イジワル御曹司と契約妻のかりそめ新婚生活

 朝十時頃、コーヒーでも淹れようかと給湯室に向かった時だった。


「恥ずかしくないのかしらね、佐々木さんと一緒に並んで」


 嘲るような声音のセリフ、その直後数人の笑い声が聞こえた。中に入る前に、ぴたっと足が止まる。めんどくさい場面に遭遇してしまった。


「営業部に来たのも佐々木さんが目当てだったんじゃない?」
「ってか、上司に頼んで見合いセッティングしてもらったんでしょ? どうやって取り入ったのかな」
「上司に言われたら佐々木さんも断れないじゃない」


 好き勝手なことを言ってくれる。かといって乗り込んで反論する気にもなれなくて、コーヒーは諦めてオフィスに戻る。


「あれ? コーヒー淹れに行ったんじゃないんですか?」


 手ぶらで戻った私を見て、河内さんが不思議そうにしていた。
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