イジワル御曹司と契約妻のかりそめ新婚生活
 私ももう一切れを手に取って、ぱくりと噛り付く。もくもくもく、と静かに食べていると、公園を行きかう人や小さな子供のはしゃぎ声が耳に飛び込んでくる。亀爺と時々ここで食べてたけど、こんな明るい公園だったんだと何気なく気づく。


「営業やってると、食事とかタイミング逃したりすることもあるの?」
「そうだな、取引先と食事するときもあるし、色々だ」
「朝の通勤時間も短くなったし、なんならお弁当作ってもいいかなと思ってるんだけど、だったら逆に迷惑になるよね」


 ふたりぶんもひとりぶんも手間は一緒だし、私の分だけ作るのもなんだしな、と思ったのだけど。迷惑になっても申し訳ない。


「……そうだな」


 ぽつ、と返事があった。不要ならそれでいいのだけれど、何か考えているようだった。


「あの、無理にとは」
「昼がゆっくり取れるとわかってるときは、もしついでに作ってくれたら助かる」
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