イジワル御曹司と契約妻のかりそめ新婚生活

「いいですね、楽しそう」


 郁人も人に対して壁のあるタイプだと思うけれど、私のように全力でぼっちに陥っていたわけではないようだ。なぜか無意識に、敬語の名残が出てしまった。


「歩実は大人数は苦手そうだな」
「苦手かな。郁人は?」

「……あんまり得意じゃないな。仕事が絡むとしょうがないから顔は出すけど」
「私も、年一だけ」

「忘年会だろ」
「え。なんで知って」
「年一だけどうしても出るなら忘年会しかないだろ普通」


 くっ、と郁人が喉を鳴らして笑った。微かに口角が上がっている。
 普段あまり表情に変化のない人が、たまに笑うととても和やかな気持ちになるのだと、彼と結婚して初めて知った。


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