イジワル御曹司と契約妻のかりそめ新婚生活

「すみません、なんとかならないですか。大口で絶対獲得したい会社なんですよ」
「書類はなんとかできても……見積書の方が明日までに出来るかどうかですね。経理にお願いしてすぐに作成はしてもらえますが、営業、経理の各部長と取締役の印が必要なので」


部長ふたりは、なんとかなる。
しかし、取締役となると私の判断で必ず大丈夫だとも言えなかった。

とにかく、出来ることからするしかない。


「経理に直接行ってきます。他の書類もどうにか間に合わせるので」


と、立ち上がった時だった。


「取締りの確認印は俺がどうにか出来る」


郁人の声がした。


「ほんとか、佐々木」
「ああ、なんとかなると思う。俺もちょうど至急で確認が欲しい案件があったからその時に」
「悪い、助かる!」


郁人とふたりの間で、どうにか話は付きそうだ。それなら、後は急ぐだけだ。


「経理にすぐに掛け合ってきます!」
「書類が出来たらすぐに俺に声かけてくれ」


郁人の言葉に頷いて、オフィスを出ようとしたが。河内さんの焦った声に引き留められた。
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