イジワル御曹司と契約妻のかりそめ新婚生活
亀爺を捕まえて見積書二案を至急でお願いし、どうにか出来そうだと見通しが立ち、ほっと息を吐く。
……河内さんに、何か声はかけなくちゃ。
彼女のミスとはいえ、いやだからこそ落ち込んでいるはずだし、気になってもいるはずだ。
だからといってこういう時になんて言えば嫌みなく出来るか、コミュ力のない私には自信がない。
悩みながらオフィスに戻った時、目に入った姿に足が止まった。
オフィス外の通路で、人目を避けたところに背の高い郁人の後ろ姿がある。向き合うように立っているのは、河内さんだった。
何か話しているけど、内容まではわからない。ただ伝わるのは、河内さんは泣いてるらしい、ことだけだ。