イジワル御曹司と契約妻のかりそめ新婚生活

決して穏便ではない話題にぴくっと顔が強張る。が、よく聞けば過去形だ。
そして少し拗ねたように唇を尖らせている。


「あんな言い方しなくても良くないですか? ちょっと考えた方がいいと思います」
「あ、えっと。ごめんね。ちゃんとフォローできなくて……」


その点に関しては、私も後悔していたからするりと言葉が出た。


「仕事のフォローは完璧ですけど。人間関係のフォローがまったくないですよね先輩って。それじゃ後輩育ちませんよ」
「……すみません」


私が怒られているような構図になってきていて内心首を傾げるが。
それほど嫌な気持ちはない。

いつもなら、謝る機会を考えているうちに陰口を言われて終わり、そんなことが多かった。だからこうして正面切って言ってくれたことが、驚きと同時に少し嬉しい。

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