イジワル御曹司と契約妻のかりそめ新婚生活
ちょっぴり心の緊張が解きてきたとき、河内さんはバツが悪そうに目を逸らした。

「なんで先輩が謝るんですか。わかってますよ私の言いがかりだって……」
「え、でも……」

私ももうちょい、上手く言えたら良かったって思ってたから。
そう言葉を続ける前に、彼女がしょんぼりと肩を落とした。

「佐々木さんに怒られたんですよ。それから、色々聞きました」
「え、何を?」

色々?
河内さんに、郁人が?


『色々』の内容もよくわからないし、どうしてそれを河内さんに言うのかも、怒ったのもわからない。
彼女はちょっと、ふてくされたような顔をしていた。


「私、悔しくって。謝ったのにあんな言い方なくないですか、ってちょっと愚痴ってたんです、営業部の女子社員の前で。それを佐々木さんに見られてしまって」


営業部の女子の面々と、河内さん。
普段はそれほど仲が良いわけでも、親しいわけでもないようなそんなイメージだが。タッグを組んで私のことを話しているイメージ像が頭に浮かぶ。

ぞぞ、とした。

「……すみません」
「いえ、もういいけど……郁人はなんて?


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