イジワル御曹司と契約妻のかりそめ新婚生活

「結構な剣幕で言われましたもん。歩実はいつも他人の仕事でも、誰にも気づかれなくてもさりげなくサポートしてる。口数が少ないし誤解されがちだけど、言葉に出ないだけでたくさんのことを考えて行動してる。決して冷たい人間じゃない。仕事上でもプライベートでも信頼できる女性だ。って」


いったい、どこの誰のことだろう、とポカンとしながら聞いてしまった。
そして私のことなのだと気づいたら、目頭がじんと熱くなる。


嬉しくて。
それから、気恥ずかしくて、耳と顔まで火照り始めた。


「やっぱり奥さんのこととかよく見てんですねえ。あ、すみませんどっちも佐々木さんなので、勝手に名前で呼んじゃってますけど良かったです? 今さらですけど」


河内さんが、もぐもぐとバーニャカウダのきゅうりを咀嚼しながらそう言った。
その間も、顔の熱が中々おさまってくれなくて。


ちょっと、うっかり飲み過ぎてしまった。
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