君が笑ってくれるなら、それでいい。〜君のいない世界〜
(どう、しよう…)

一応柔道は習っていたものの、大人の見るからに男性に通じるか正直怪しい。

もたもた考えていると、物あさりが終わったのか、今度は下にくるのかこちらへ向かってきた。

このままでは見つかってしまうと思い、急いで階段を降りた。

(優希、優希!)

私は携帯で優希に電話をかけた。

—プルルルルル

〈もしもし〉

「ごめん、優希!?」

〈そうだけど〉

「助けて!!」

〈えっ?今どこ〉

私の焦りに気付いたのか、深刻そうな声を出している。

「私の、家!」

〈すぐ行く〉

そう言って切れた電話。

優希の声を聞き安心した。

それがいけなかった。

私はこの時気付いていなかった。

強盗に来た男がすぐ近くにいると。

——気付いた時には、もう遅かった。
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