君が笑ってくれるなら、それでいい。〜君のいない世界〜
(よかった。これで助かる)

あとは外に出れればいい。

玄関に向かって歩き出そうとした、その時。

「んッ!?」

急に口をハンカチでふさがれて、息ができなくなった。

いや、息はかろうじてできるものの、薬品の匂いがこのハンカチからした。

(う……何これ。意識が遠のく…)

バタン!

私は床に倒れながらも、犯人の顔を見て記憶しようとした。

でも、顔を見て、見なければよかったと後悔した。

その顔は私のよく知った人だった。

「お、父、さん…」

私はそこで意識を手放した。
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