恋を忘れたバレンタイン
 佐々木さんに言われた事で、もう一度彼女と向き合いたいと思った。だけど、彼女にどう話か掛ければいいかさえも分からない。

 定時を過ぎれば、バレンタイン同様オフィスからは人気が無くなった。
 たいした仕事が残っている訳では無いのに、帰る気になれない。それは、いつもの事だが彼女がまだ残っているからだ。


 仕事に集中出来るわけでも無く、パソコンの画面を見ながら指でボールペンを回す。
 彼女に声を掛ける理由を探しながら……


 ふいに近くに彼女の匂いが鼻をかすめた。
 まさかと思い、そのままボールペンを回した。


「その、ボールペン私にくれない?」

 背後から声がしたような気がするが……

 空耳か? 
 確かに彼女の声だが、そんな事があるだろうか?


 ボールペンを回す手は止まっていた。


 俺は、ゆっくりと声のした方へ振り向いた。
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