恋を忘れたバレンタイン
 やっと、マンションに着くと安堵のあまり冷静に食事の準備へ向かう事が出来た。

 本当はすぐにベッドに連れ込むつもりだったのに、しっかりと彼女のペースに流されている。

 
 おいしそうにチーズを口に運ぶ彼女を見て思った。
 思い切って彼女に正直な気持ちを伝えようと…… 
 今、伝えなければ、いつか大きな溝になってしまう気がするから……


「美優」

 俺は、彼女を名を呼んだ。


「何よ。突然名前で呼ばないでよ」

 彼女が顔を赤くして声を上げる。


「別にいいじゃん…… 会社じゃないんだから……」

 俺は、平然と開き直る。


「で、どうしたのよ?」


 それでも気持を立て直し話を聞こうという姿勢に、やはり彼女は大人の女性だと改めて思う。


「俺さ、今度の研修で海外事業の認定合格したんだ」

 ワイングラスを口に運ぶ。


「えっ、凄いじゃない! おめでとう」

 彼女は純粋に喜んで、ワイングラスを上げた。


 だけど、俺が言いたいのはそこじゃない。


「だから……」

 俺は、緊張しているのか言葉が止まる。
< 111 / 114 >

この作品をシェア

pagetop