恋を忘れたバレンタイン

 俺は、バスタブにつかり、彼女が部屋にいる実感に胸を熱くした。
今夜は、気持を抑える自信がない……

 彼女の待つリビングの戸を、少々緊張しながら開けた。


 だが、俺が目にした光景は……

 えっ?

 俺は、固まったまま動けない……

 まさか……


「何をしているんですか?」



 俺の言葉に、彼女がゆっくりと振り向いた。



 驚いたように目を開け、口には丸いチョコをくわえている。

 どうして……


 俺は、彼女に近づき半分口から出ているチョコを、唇を触れさせながら齧った。
 全部食べられてたまるものか……

 何故、食べてしまうんだ。
 彼女の行動が分からない。

 だけど、決して悪びれた様子もなく、
「美味しいわね……」
 と、ほほ笑んで言う。


 彼女は、まだ分かっていない。
 俺が、どれほどの想いでここまで来たのか……
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