恋を忘れたバレンタイン
「冗談じゃない…… 主任は、いいわよって言いましたよね」

「バカじゃないの? いい歳のおばさんが、本命チョコ? 笑わせないでよ…… 恋してチョコ渡すなんて、もうとっくに忘れてしまったわ」

 そう言い放って、背をむけようとした彼女の肩を掴んだ。

 彼女との距離が近くなる。


「忘れたなら思い出せばいい……」


 完璧に俺のスイッチが入ってしまった。


 目の前にいる艶やかな瞳で睨む彼女を、俺は離す事がもう出来ない。


 手を放してしまったら、彼女にとって俺は隣りのチームのたまたま世話をしてくれた人に過ぎなくなってしまう。

 そんな不安と、愛しくてたまらない気持ちが彼女の唇を奪った。


 僅かに離れた唇が、

「やめて……」

 と苦しそうに言う。


「いやだ……」

 俺は、唇を離さず言うと、また、唇を重ねた。


 気持ちを止めることは出来ず、キスが深くなっていく。


 彼女の力がすっと抜け、腰を支えるよう手をまわす。


「はぁ…… どうして、こんな……」

 彼女は息を切らしながら俺に訴える。


「はぁ…… あなたが、魅力的だからに決まってます」


「そんな事を聞いてない……」

 彼女の目が、怒りながらも色気に帯びている。


「あなたがいけなんです、ソファーで寝るなんて言うから。俺だって、我慢しようと思っていたのに……」

 俺は、ギュッと彼女を抱きしめた。



「離して……」

 力の入らない彼女の声が、たまらなく俺を興奮さていく。


 俺は、彼女を抱き抱え寝室へと向きを変えた。
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