海軍提督閣下は男装令嬢にメロメロです!

 ……なんか、父ちゃんを思い出すな。母ちゃんって人はわりとサッパリしてて、その分父ちゃんは甲斐甲斐しすぎるくらいに、私に手をかけてくれたもんだよ。
 父ちゃんもとろけそうな目、してたっけなぁ。
「なぁ、アーサーさんってさ、俺の父ちゃんみたいだ」
 え? 告げた瞬間、アーサーさんのとろけるようだと思った目が、滲む涙で実際にとろけそうになった!?
「どうかしたか!?」
「な、なんでもないぞ! よし、俺も食うとするか!」
 アーサーさんは自分の肉はほぐそうとせず、骨を掴むとそのままかじりついた。
 なるほど、アーサーさんの歯が強いというのは本当らしい。アーサーさんはまるでなにかを振り払おうとするかのように、がむしゃらに肉を貪っていた。

「へぇ、船長付きになったっていうのは君か」
 そうして私たちがあらかた食べ終えたタイミングで、声をかけてくる人物がいた。
「俺は副船長のマーリンだ」
「お初にお目にかかります。船長付きのコショーのエレンです! よろしくお願いします」
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