海軍提督閣下は男装令嬢にメロメロです!
私は慌てて椅子を立ち、副船長と名乗ったマーリンさんに頭を下げる。
「あぁあぁ、そんなにかしこまらなくていい。座ってくれ」
「そうだぞエレン。マーリン相手にそうそう固くなる必要などない」
私は促されて顔を上げると、もとの椅子に腰を下ろした。
テーブルを挟んで向かいに腰を下ろしたマーリンさんは、一見朗らかな笑みを浮かべていた。だけど私は、その目の奥に朗らかさとは対極にある厳しさを感じた。
んわっ!?
突如、マーリンさんの鋭い眼光が、私に迫る。グンッと身を乗りだしたマーリンさんの鼻先が、近い!
「こらマーリン!? 俺のエレンに近づきすぎだ!」
隣のアーサーさんが、マーリンさんの額にシュパッと鋭いチョップを入れる。『俺の――?』に対して浮かびかけた違和感は、チョップのインパクトが消し去った。
マーリンさんは、叩きつけられたチョップにもいっさい引かない。
拮抗する力と力。……なんか、おっかない。