海軍提督閣下は男装令嬢にメロメロです!

 私は慌てて椅子を立ち、副船長と名乗ったマーリンさんに頭を下げる。
「あぁあぁ、そんなにかしこまらなくていい。座ってくれ」
「そうだぞエレン。マーリン相手にそうそう固くなる必要などない」
 私は促されて顔を上げると、もとの椅子に腰を下ろした。
 テーブルを挟んで向かいに腰を下ろしたマーリンさんは、一見朗らかな笑みを浮かべていた。だけど私は、その目の奥に朗らかさとは対極にある厳しさを感じた。
 んわっ!?
 突如、マーリンさんの鋭い眼光が、私に迫る。グンッと身を乗りだしたマーリンさんの鼻先が、近い!
「こらマーリン!? 俺のエレンに近づきすぎだ!」
 隣のアーサーさんが、マーリンさんの額にシュパッと鋭いチョップを入れる。『俺の――?』に対して浮かびかけた違和感は、チョップのインパクトが消し去った。
 マーリンさんは、叩きつけられたチョップにもいっさい引かない。
 拮抗する力と力。……なんか、おっかない。
< 101 / 203 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop