海軍提督閣下は男装令嬢にメロメロです!
「するわけないよ。まぁ、頼めば先渡しくらいはしてもらえるだろうけど、あくまで翌日分を先にもらうってだけさ。積み込みの荷は限られているから、これは末端の乗組員から上は船長まで皆同じ条件さ」
 私の疑問は、トレッドが一蹴した。
 同時に私の中で、スゥッと熱が引いていくのがわかった。
「あ! 悪いけど遅れると大目玉だから、俺もう行くから! ごめんなっ!」
 トレッドが小走りに消えた後も、私はその場で呆然と佇んでいた。
 ……だって、そんなのはおかしいだろう?
 日焼けを負ったあの日、私はアーサーさんから満タンに水が入った、新しい水袋をもらった。
 だけど翌日も、私は普通に満タンの水袋を支給してもらった。
 じゃあ、あの水袋は……? 私は歯噛みして、両の拳を握りしめた。
 私はとんだ馬鹿野郎だ!
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