海軍提督閣下は男装令嬢にメロメロです!
「全乗組員、出航用意!」
 よく通る声が、甲板上に響き渡る。
「出航用意!」
 アーサーさんの号令に、艦橋番が反復すれば、最後に残っていた舫が杭からほどかれた。帆が風を受けて大きくふくらむと、船はゆっくりと沖へと動き出す。
「出航ー!」
 乗組員から拍手喝采が巻き起こった。
 一糸乱れぬ組織だった出航は、商船とは思えない圧巻のもの。まるで、夢でも見ているかのようだった。
興奮して、ずっとドキドキが止まらなかった。乗組員の動きひとつ取っても新鮮で、私は忙しなくキョロキョロと視線を巡らせていた。
 父ちゃんに聞かされてから、ずっとずっと、夢見てた! 私の知らない新たな世界!
私はついに、夢の第一歩を踏み出した。

「エレン、今後の船上生活について少し説明しておこう」
 いつの間にか、隣にアーサーさんが立っていた。
「あ! ちょっと待って!? 俺、ルドランス王国の大地を見てくる!」
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