海軍提督閣下は男装令嬢にメロメロです!
「っと、エレン!?」
 思い至ってしまえば、居ても立ってもいられなかった。アーサーさんの腰をエイと押しのけて、私はそのまま転がるようにして船尾に向かって走った。
「わあっ!」
 視線が縫いつけられたみたいに、段々と遠ざかる港から目を逸らすことができない。瞬きすら忘れ、私は小さくなっていく故郷の大地を見つめていた。
 そうして私は故郷の大地が見えなくなってきた頃、甲板から身を乗り出すようにして……
「ゥオエッ――!」
 吐きまくった。
「エレン! 大丈夫か!?」
 すぐに駆け寄ってきたアーサーさんが、甲板に突っ伏す私を抱き起し、背中をさする。
「ウッ、ウッ、ウェッ――」
 だけど激しい吐き気は、治まってくれる気配がない。それどころか、ますます……。
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