海軍提督閣下は男装令嬢にメロメロです!

 晴れ晴れと言いきって、アーサーさんは私にくるりと背中を向けた。
「とにかくそういうことだから、エレンは夕食ができあがるまで横になっているんだ。夕食ができたら声をかける。約束したからな、ではな」
 扉から出がけに振り返ったアーサーさんは、しつこいくらいに言い含めて、今度こそ扉の外に消えていった。
「……いや、別に私は約束なんてしてないだろ?」
 宙に向かって、私はさっきと逆方向に首をかしげた。
「ってか、アーサーさんってあんなに過保護な奴だったっけか? ……わっかんねーなぁ」
 けれど不思議なもので、清涼な香りのするシーツに包まれて横になれば、問答無用で心地よくなってしまう。
 夢心地でシーツに頬ずりしながら、ふと父ちゃんを思いだした。父ちゃんが以前、よく眠れるからって言って、枕カバーにハーブ水を吹きつけてくれたことがあった。
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