海軍提督閣下は男装令嬢にメロメロです!

 だけど父ちゃんの答えは、私をおおいに魅了した。世界というのはきっと、目先の感動を凌駕して、深く魂を揺さぶるのだろう。
 胸が高鳴って、わくわくした。
「って、こら、エレン!? また妙な方向に、いらない好奇心を出すんじゃないぞ? 海向うの大陸というのは、とても遠い。長く険しい航海を経てたどり着いたとしても、そこからまた帰ってくるのだってひと苦労だ。長い航海の中で船が難破して、命を落とす船乗りも多いんだ」
 父ちゃんが何事か言い募っていたけれど、父ちゃんの言葉はもう、耳を素通りしていた。
「エレン聞いているのか? そもそも船乗りってのは、素行不良の男たちが集う場末の職のようなもので、収奪や人身売買が横行するあこぎな商売なんだ。女の子のエレンが船に乗りたいっていうのは、そもそもかなわない話だからな?」
 今、私の目にキラキラとまぶしいのは、新しい大地。そこに息吹く人々の暮らし、そこには私がまだ知らない、新しい世界が広がっている。
 まだ見ぬ、新たな世界への憧憬で胸が満たされていた。
「……父ちゃん、私、先に出る」
 言うが早いか、ザバンとお湯を波立たせ、湯船をまたぐ。
「エレン!? くれぐれも馬鹿なことを考えるな!」
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