というわけで、結婚してください!
 征は、時間を確認するように時計を見たあとで、口を開く。

「あのとき――

 俺にはお前が自分から尊についていったように見えた」

「……そんなつもりはなかったんですが。
 そうだったのかもしれません、すみません。

 どんどん進んでいく結婚話に、私、ついていけてないままだったのかもしれません」

 本当に申し訳なかったと思い、頭を下げた鈴に、征が言ってきた。

「鈴。
 女は好きな男より、誰よりも自分を愛してくれる男と一緒になった方が幸せになれると言うぞ」

 話のつながりがわからず、鈴は、きょとんとして、征を見上げる。

 これは、私の話をしているのだろうか?

 ちょっと意味がわからないんだが、と思いながら、鈴は征に訊いた。

「……誰なんですか?
 誰よりも私を愛してくれる人って」
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