というわけで、結婚してください!

 窪田には、屋敷に居た頃から、ずいぶん世話になっている。

 そして、今も――。

 自分にできることがあるのなら、してやらねばな、と思っていた。

 だが――。

『尊様と鈴様も、ぜひ、お友達にご宣伝ください』

 その一言が引っかかる。

 なにかまるで、鈴と自分が、これからも共に居るかのようだ。

 そんなことあるだろうか? と尊は思う。

 俺たちが一緒に居る未来なんてない。

 鈴は、そのうち、征の許に返してやるつもりだし。

 そもそも、招待客の前で、鈴を連れて逃げたことで、目的のほとんどは達成できている。

 ……なのに、なんで俺はまだ、鈴を連れ歩いているんだろうな?

 そう思ったとき、式場から見知らぬ男に略奪されたというのに、鼻歌まじりにジェットバス に入って、20センチのフライパンがどうのこうのと言っている鈴を思い出し、吹き出してしまった。

「楽しそうで、なによりです」

 修復作業を見上げていた窪田が、チラとこちらを見て言ってくる。
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