というわけで、結婚してください!

 


 結局、まだ湯に浸かっていた鈴は、白いつるつるした湯船の縁《ふち》に腕を置き、テラスとその横で咲き乱れる花々を見ていた。

 尊に連れ去られてから今まで、いまち現実感がなかったのだが。

 ひとりになって、冷静に考えてみると、これから先、どうなるんだろうな、と思ってしまい、ちょっとゾッとする。

 だが、鈴がゾッとしていようといまいと、花は綺麗に咲いてるし、カルガモ の親子は可愛らしく泳いでいるし、湯加減はちょうどいい。

 まあ……考えても仕方ないか、と思い、鈴は風呂から出ることにした。

 振り向き、尊に声をかける。

「尊さーん。
 お風呂入りますー?」

 夜に入るのなら、湯を抜いておこうと思ったのだ。

 だが、返事はない。

「……尊さーん?」
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