恋愛零度。

『ありがとう、希美ちゃん。さすが、運動神経もバツグンだね』

男の子が前に立って、お姉ちゃんに言った。

『まったく。しっかり見ててよね。奏多くん』

と普通に答えるお姉ちゃん。

『……だ、だれ?お姉ちゃんの知り合い?』

私がそっと耳打ちすると、

『おなじクラスの子』

とお姉ちゃんは言った。

『あ、こっちは妹の真白。1年生』

『妹いたんだ。ぼくは本田奏多。よろしくね』

男の子は、さっきまで大暴れしていた犬の頭をなでながら、のんきに笑う。

『ごめんね。こいつ、チビのくせに、知らない人にいきなり近づかれると、めちゃくちゃ警戒して暴れるんだ』

『なら公園なんて連れてきちゃダメでしょ』

お姉ちゃんの冷静なツッコミに、だよね、と彼は困ったような顔をする。

『でもこの間引っ越してきたばっかで、この辺のことよく知らなくてさ』

『あ、それなら……』

私は思いついて言ってみた。

『え?』

2人に見られて、少し緊張しながら、私は言った。

『ちょうどいい場所、知ってるよ』

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