恋愛零度。

それで連れて行ったのが、この川原だった。

川と草と砂利があるだけの、なんでもない場所。だけど、少し離れたところにちゃんとした遊び場があるから、滅多に人がこない。

『真白、よくこんなとこ知ってたね』

『こういう場所見つけるのは得意なんだ』

私はちょっと得意になって言った。

『うん。ここなら大丈夫そうだ。ありがとう、真白ちゃん』

『ど、どうも……』

だけど面と向かってお礼を言われるのは、苦手だった。

自由になったマロンは、嬉しそうにそこらじゅうを駆け回った。体が小さいから、そうしていると、さっきみたいに突然凶暴になるなんて、とても思えない。

私たちは、ホッとして、その様子を見ていた。

『楽しそうだなー』

奏多はそう言って、少し悲しそうな目をした。

『あいつ、前に飼われてたとこでいじめられてたみたいでさ。人に対して異常に警戒心が強いんだよ』

『わたし、マロンと仲良くなりたい』

私はすくっと立ち上がった。

『……真白、あんた話聞いてた?』

『だって、寂しそうだもん』

人を攻撃するのは、嫌だからじゃなくて、怖いから。

だから、大丈夫だよ、怖くないよって、伝えたかったんだ。
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