恋愛零度。
『ねえ、あれやらない?石投げて水のうえピョンピョン跳ねるの』
『水切り?』
『いいよ、やろうやろう!』
『えいっ!』
私は石を拾って思いっきり投げたけれど、一度も跳ねることなく、ぽしゃん、と水の中に沈んでしまった。
『あれ?跳ばないよー』
『真白ヘタだなー。ぼくが見本見せてやるよ。見てて』
奏多が投げた石も、吸い込まれるように水の中に消えた。
『…………』
『奏多だってヘタじゃん!』
『こんなの簡単じゃない』
お姉ちゃんが投げた石は、ぴょん、ぴょん、と軽やかに5回も水を切った。
『ええ?なんで?なんでお姉ちゃんだけできるの?』
『こんなの着水角度を計算すれば簡単だし』
『なにその天才発言』
それから、私と奏多は何回やってもできなくて、お姉ちゃんだけどんどん上手くなっていった。
『お姉ちゃんすごい!水切り選手権優勝だよ!』
『ないよそんなの』
『それがあるんだよ。世界記録は88回だって。日本の川じゃあまず無理だよなあ』
なぜかウンチクだけは詳しい奏多が言って、お姉ちゃんと私は「へええ」と声をそろえた。
『まあ、ぼくと真白は才能がないってことだな』
『だねえー』