恋愛零度。

週末の夕方の駅は、人で混み合っていた。待ち合わせスポットの時計のまわりは、とくに人でいっぱいだ。

「すごい人……」

「100パー満員電車だねー」

言いながら、天井からぶら下がっている電光掲示板で、電車の時間を確認する。

「あ、三好さん、次の電車ーー」

私が言いかけたそのとき、三好さんが、ふと、足を止めた。

「あっ、由良くん」

「えっ?」

見ると、時計の下の台に背中をもたれかけている由良くんがいた。誰かを待っているのか、スマホをいじっていて、こっちにはまるで気づく気配がない。

ーーすごいな、三好さん。

こんな人混みのなかから、由良くんをすぐに見つけるなんて。

本当に好きなんだなあ、そう思ったときだった。
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