溺甘同棲~イジワル社長は過保護な愛を抑えられません~

「まぁそうだな……昔のよしみってとこかな」


〝昔のよしみ〟。その言葉を心の中で反芻するけれど、優花には今ひとつ納得がいかない。高校時代に仲が良かったのならまだしも、単なるクラスメイトだ。


「俺のこと、怪しんでるって顔だね」
「ううん、そういうわけじゃ……」


優花が急いで否定する。
片瀬はなにかを企むような人ではない。優花が納得できないのは、片瀬自身にはなんのメリットもない提案を彼がしていることだ。
ただの元クラスメイトというだけで、会ったその場で同居しようなんて普通は考えないだろうから。


「社長、そろそろお時間ですが」


不意に、優花たちと少し離れたところから男性が声をかけてくる。
声の方に顔を向けてみれば、そこには華奢な体格のスーツ姿の男が立っていた。一重瞼のせいか、神経質そうに見える。

(今、社長って呼ばなかった? 片瀬くん、どこかの社長さんなの?)
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