溺甘同棲~イジワル社長は過保護な愛を抑えられません~
優花がポカンとしてふたりを見比べていると、片瀬はその男性に軽く右手を上げた。〝わかった〟という合図だろう。
「宮岡さん、ごめん。スマホか携帯は持ってる? 番号教えて」
片瀬はおもむろに胸ポケットから自分のスマートフォンを取り出した。
「あ、うん。〇九〇の……」
唐突に聞かれた優花が勢いでナンバーを諳んじる。すると数秒後、バッグの中で優花のそれが短い着信音を響かせた。
「それ、俺の番号だから。決心がついたら連絡くれる?」
「えっ、でも」
「待ってる」
最後のひと言に片瀬の力が込められる。
戸惑う優花を置き去りに、片瀬は声を掛けてきた男性を従えて、不動産屋の隣のビルに消えていった。
バッグからスマートフォンを取り出し、着信履歴を眺める。