溺甘同棲~イジワル社長は過保護な愛を抑えられません~

激しく瞬きを繰り返しながら、優花が聞き返す。

(今、俺の部屋に来いって言ったの? ……まさかね。そんなことを言うはずないよね)

聞き間違いだろうと思い直していると。


「住むところに困ってるんだよね? だったら俺のところにおいで」


心構えをして優花が聞いた二度目のセリフは、さっきの言葉が聞き間違いではないと言っていた。
激しい波を打った心拍が、さざ波のように全身に伝わっていく。


「……どうして?」


そう聞かずにはいられない。
いくら同級生とはいえ、十年ぶりの再会。それも高校時代はクラスメイトというだけで、しゃべったことも両手で数えられるくらい。接点はほとんどなかったのだから。


「どうしてって聞かれると困るけど」


片瀬が鼻の下をこすりながら、視線を車道の方へ移す。そして、しばらくして優花に舞い戻った目を三日月のように細めた。
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